仏像には様々なモノが入っている!
日本では一般的に、仏像の魂はお経という形で表されました。平安時代以前の時代では、出来上がった仏像の前で、お坊さんがお経を読み上げることで魂を注入したといいます。それが平安時代を過ぎると、紙に書いたお経や呪文を仏像の中に入れる方法が主流になります。お経は紙ではなく、仏像の内側に直接書く場合もありました。いずれにせよ、仏像が木で作られるようになり、仏像の中に空洞ができたため、魂の入れ方が変わっていったのだと考えられています。
他にも、髪の毛や抜けた歯が入っているという仏像もあります。仏像を作らせる人たちは、自分の体の一部や大切にしていた物を入れることで、自分自身と仏像が一体となることを願ったのです。
現代技術でわかる仏様の中身
中に入った品物は取り出せなくても、レントゲンなどの現代技術を使えば、仏像の中身を知ることができます。
鎌倉時代に作られた重要文化財『大日如来坐像』をX線に通したところ、五輪塔(※1)の形をした木の板や水晶の珠などが入っていました。水晶の球は仏様のちょうど心臓あたりに位置し、これがこの仏像の魂だと考えられます。底がふさいであるため、中の品物が人目に触れることはありませんが、レントゲンを通せば、入れ方にも工夫が凝らされていることがわかるのです。
また2015年に、オランダのドレンツ美術館に持ち込まれた中国の仏像をCTスキャンしたところ、人間の骨格が写し出されました。詳しく調べると、中に入れられていたのは内臓のないミイラ化した遺体。のちにこの遺体は、1000年以上前の中国にいた高僧が即身仏(※2)化したものであることがわかりました。
仏像の中には魂とともに、その仏像が作られた時代の“空気”が残っています。誰がいつ作ったか、何のために作られた仏像なのかなど、時空を超えて、私たちに教えてくれるのです。
(以下、注釈)
※1 五輪塔:お墓などに多く用いられる形で、死者を極楽浄土へ旅立たせることができる供養塔。
※2 即身仏:悟りを開くため、一切の食事を断つなどの過酷な修行ののちに入滅した僧侶のミイラ。