電話占い体験談

15年ぶりの再会、赤い糸で結ばれた相手

赤い糸で結ばれた相手

私の身にあの不可思議な出来事が起きたのは、今から半年前のことです。ちょうどその時期、郷里の妹が上京して私のアパートの部屋に連泊していたのですが、「東京観光の最後にお洒落なお店で食事したい」とせがまれて、広尾のフレンチレストランへ出掛けることになりました。しかし、夜の7時に現地へ到着したところ、電話での予約のやり取りに何か手違いがあったらしく、満席で入れないと言われたのです。マネージャーの人は平謝りでしたが、閉店まで席の都合がつかないということで仕方なく別のお店を探すことになりました。スマホのグルメ情報を頼りに付近にある何軒かのレストランを回り、ようやく席に着くことができたのが夜8時過ぎ。そこはスペイン風のバールで、注文した小皿料理はすべてとても美味しく、店員さんも気さくな感じでなかなか居心地が良い店でした。

それで、そのお店でワインをいただきながら妹と食事をしていると突然、背後の席から声を掛けられたのです。「もしかして朝子?」振り返るとそこには、高校時代に同級生だった幸恵の姿があったのです。私たちは思わぬ邂逅に驚きながら、お互いの近況などについてしばらく語り合いました。彼女は地元の短大を出た後、隣県の工事会社に就職し、そこで夫となる人と出会って結婚。しかし3年前にその旦那さんが東京支社に転勤となり、一緒に付いてきたとのことでした。「この店ね、東京に来て初めて旦那に連れてきてもらった記念の場所なの。その時に気に入っちゃって、今でも月に一度は必ず顔を出しているのよ。今日も買い物帰りにちょっと飲みたくなって一人で寄ってみたの。そうしたら懐しい顔が目に入って、本当にびっくりしちゃったわ!」にこやかな顔でそんなことを言っていたのを憶えています。とりあえずその晩はお互いの携帯番号を交換して別れました。

翌週の土曜日、幸恵から急に連絡が来て渋谷のカフェで再び会いました。そして席に落ち着くなり彼女は、私にスマホの画面を見せてきたのです。「これ、私の弟なんだけど今、東京で働いているの。良かったら一度、会ってみない?」「もしかして、それってお見合いってこと?」「いや、そんなに堅苦しいことじゃないんだけど、気を悪くしたらゴメンね」「謝らなくても良いよ~。ただ突然の話だったからびっくりしたの」

写真の人物は若々しい雰囲気に満ちた美男子でした。涼やかでおっとりした目元は姉の幸恵にそっくり。彼女と同様、優しい性格の人なのだろうなと感じました。年甲斐もなく恥ずかしい話なのですが、その顔を見つめているうちに胸がキュンとなってしまいました。そんな私の表情を見て取ったのか、今度はメモ書きの紙片を渡されました。「これ弟の携帯番号。向こうにはもう朝子のこと話してあるから、良かったら電話してあげて」

翌日の日曜日、私は逡巡しつつも、幸恵にもらった携帯番号に電話してみました。「もしもし、どなたですか?」「初めまして。お姉さんの友人の藤永と申しますが」「はぁ?」相手の男性は怪訝そうな声で対応してきました。こちらも首を傾げつつ「あの、失礼ですが幸恵さんの弟さんですよね」と確認すると「たしかに姉の名は幸恵ですが、あなたは姉とどういう関係の方なのでしょうか」と逆に問い返されました。(弟にはもう話をしてあるって言っていたのに。これって一体どういうことよ!)腹立たしさとバツの悪さがないまぜになり、そのまま通話を切ろうとしたのですが、「ちょっと、ちょっと待ってください!」と強く引き留められ、渋々こちらから連絡した経緯を話しました。すると相手は絶句し、しばらく沈黙が続いた後、「すいません。直接、お会いして話したいのですが、これからどこかで待ち合わせることはできますか」と唐突に言ってきたのです。

2時間後、私は最寄り駅近くの喫茶店で幸恵の弟さんと向かい合っていました。その口から語られた内容は耳を疑うものでした。「姉の幸恵は1年前、車の運転中に追突事故に巻き込まれて亡くなりました。あなたが広尾で会ったというその日が姉の命日です」最初は姉弟で私をかついでいるのかと思いました。しかし、彼の真剣な顔つきと態度からそれが嘘でないことはすぐに分かりました。私が幸恵と再会した広尾のバールのことも弟さんはよく知っていました。幸恵とその旦那さんに誘われて、何度か食事をしたことがあったそうです。「生前、姉には『早く身を固めなさい』としつこいくらい言われていたんですが、つい昨日の夜も僕の夢枕に立って『お姉ちゃんが素敵な相手を探してあげたからね』って」

帰宅してから前日に実家へ帰っていた妹に電話しました。事の次第を話したもののなかなか信じてくれませんでしたが、そのうちに彼女も恐くなったのか「それってお祓いを受けた方が良いかも」と言い出したのです。そして妹が時々、利用しているという電話占いの番号を教えられ、すぐにプロの霊能者の鑑定を受けました。先生の名前は坂本五十鈴さん。私が一連の出来事を伝えると、「それはさぞかし驚かれたことでしょうね。じつは今、あなたのお話をお聞きしながら幸恵さんの霊とも通信しているのですが、ご本人も『恐がらせてごめんなさい』としきりに謝っていますよ」と言われました。「幸恵さんは霊界へ行かれた後、弟さんと赤い糸の縁で結ばれた相手のことを調べたそうです。そしてそれがあなたであると分かり、今回のような形で働きかけをした、とおっしゃっています」坂本先生の説明では、死者が生前と同じ姿で家族や知人の前に現れる現象というのは、それほど珍しいことではないそうです。霊界や幽界の次元から人間の脳に働きかけて、それを現実として認識させることができるのだと。

この出来事がきっかけとなり、私と幸恵の弟さんとのお付き合いが始まりました。現在はお互いの部屋を頻繁に行き来して、半同棲のような暮らしをしています。もちろん結婚前提の交際です。その後、幸恵が私の前に姿を現すことは全くなくなりましたが、一度だけすでに使われていない彼女のメアドからメッセージをもらいました。メールにはただ一言「幸せになってね」とだけ書かれていました。私は涙が止まりませんでした。