電話占い体験談

送れなかった告白メール

告白メール

今年の6月に結婚しました。私の夫となった男性は奇遇にも富山の故郷で同じ高校に通っていた同級生で、しかも当時の初恋の人でした。ちなみに彼と再会したのは東京です。その出会いに至るまでの過程でとても不思議なことがあったので、それについてお話しします。

そもそも私は地元の高校を卒業後、某中規模メーカー工場の事務職に採用されてそこで働き始めたのですが、就職して2年目の頃に突如、大学へ行きたいという想いが募り、日々の仕事の合間に密かに受験勉強を続けて隣県の国立大学へ進学しました。入学したのが21歳だったので卒業した時には25歳。年齢的に新卒採用の枠に入るのは難しいと覚悟したのですが、なんと最初に勤めていた会社の支社長さんがわざわざ声を掛けてくれて、再度同じ勤務先へ今度は総合職として入り直すことになりました。ただしその条件として提示されたのは東京本社で勤務すること。もちろんすぐに承諾し、生まれて初めての東京で1人暮らしをスタートさせたのです。そして勤続3年目を迎えた昨年の晩秋、突如として不可思議な現象に見舞われました。

最初に起きたのは夢に関わる出来事でした。11月初旬、長く病床に伏せっていた実家の祖母が亡くなったのですが、その葬儀の直後から立て続けに同じ夢を見るようになりました。その夢の中には必ず祖母が生前と同じ姿で優しく笑いながら現れ、私を手招きして実家の縁側へ連れて行くのです。「お祖母ちゃん、何か用?」と訊ねると祖母は縁側の端に座り込み、「これ解くのを手伝って」と頼んできました。その手には赤色の毛糸で編まれた古びたセーターがあり、私は祖母と一緒にそのセーターをほぐして毛糸の玉に戻します。いつもその途中で目が覚めました。そんな夢を3晩続けて見た次の日、さすがに気になって実家へ電話しました。母に「お祖母ちゃんの遺品の中に赤いセーターってある?」と訊ねると、「心当たりはないねぇ。第一そんなの着ているの見たことがない」という素っ気ない答え。しかしどうしても納得できず、年末に帰省した際に祖母が寝ていた仏間の押し入れや箪笥をさんざん探し回り、それらしい衣服がないかと自分で確認してみたのですが、母の言葉通り、夢に出てきたセーターを発見することはできませんでした。それで諦めて三が日明けに東京へ戻り、再び会社通いの日々となりました。

(お祖母ちゃん、何か私に伝えたいことがあったんじゃないかと思ったんだけど、やっばりただの夢だったのかな)そんなことを頭の片隅でつらつらと思いながら毎日、仕事を続けていたある日、会社帰りの電車に揺られながらスマホを弄っているとメールの着信がありました。ノータイトルの怪しいメールでしたが、送信元のメアドを見た途端、思わず我が目を疑いました。表示されていたのは、私が以前持っていたガラケーのメアドでした。いったいどういうことなのかと訝しみながら、恐る恐る文面を見てまたびっくり!何とそこには10年以上も前、私が密かに書いたラヴレターと同じ内容の文章が書かれていたのです。そのメールは当時、片想いをしていたクラスメートの男子に宛てたものだったのですが結局、相手に送信する勇気を持てず、携帯のメモリーに保存したままになっていました。古い携帯自体はとうに解約して処分してしまっているので当然メアドが活きているはずもなく、試しに空メールを返信してみるとすぐにリターンされました。

祖母の夢の件とあいまってにわかに混乱した私は、夢遊病にでも罹ったような心持ちでフラフラと途中下車しました。少しの間どこかで頭を冷やしたいと思い、手頃なカフェのような場所を探していたのですが、やがてふと小さな看板が目に留まりました。そこは占いルームと思しき店で、ガラス越しに中を覗いてみると受付のカウンターの向こうにカーテンで仕切られたいくつかのブースがあり、その各々のスペースに占い師が常駐している様子が見えました。そのまま吸い込まれるように店内へ入り、「誰でも良いので占ってもらいたい」と受付に頼みました。係の女性は、「相談内容について、簡単で結構ですから書いていただけますか」と言って小さな紙片をこちらへ差し出してきたのですが、自分の体験についてどう表現すれば良いのか分からないので仕方なく「霊?」と書きました。すると彼女は怪訝な表情を浮かべながら、ちょうど前のお客さんの鑑定が済んだばかりのブースへ通してくれました。そこにいたのは小綺麗な雰囲気の中年女性で、テーブル越しの椅子に座るよう促され、相談の内容についてあらためて訊ねられました。

拙い言葉で今しがたの謎のメールのこと、続いて祖母の夢の件を話したところ、すぐにタロットカードを使った占いが始まりました。その占い師は霊感タロットが専門の先生とのことで、カードをめくってテーブルに並べながらぽつりぽつりと言葉を漏らし始めたのです。「まずお祖母さんの夢ですが、それは間違いなく霊夢ですね」「レイム?」「はい。亡くなったお祖母さんからあなたへのメッセージです」「祖母は何を伝えたかったんでしょうか」「おそらく結婚に関することですね。赤い毛糸というのは赤い糸のこと、つまり運命の相手と出会うという意味です」「じゃあ、これは?」私は電車の車内で受け取ったメールを見せました。すると「これも多分、お祖母さんを含めたあなたのご先祖筋のお導きです。あら、このメール、どこかへ転送されているようですよ」言われて画面を見返してみると、いつの間にか転送マークが付いていました。しかも転送先のメアドには見覚えがありました。それは高校時代の私が告白メールを送るはずだった男子生徒のものでした!

それから数日後、当時の男子生徒本人から連絡がありました。そう彼は10年の歳月を経て、私のあのメールを読んだのです。郷里の旧友や知人たちとの連絡用に、以前使っていたガラケーを解約しないまま持ち続けていたそうです。懐かしいのでぜひ会いたいと言われ、その再会をきっかけに交際が始まり、そして結婚。本当に目まぐるしく、また夢のような半年でした。またその後、夢に出てきた謎のセーターについてもその正体が分かりました。父にあらためて訊ねたところ、祖父がまだ若い頃に赤い色のセーターを着ていた記憶があると言われました。そのセーターは祖母が手編みして祖父にプレゼントしたものだったそうです。