占い師コラム

フランス・ルルド 奇跡の泉~世界の神秘と奇跡ファイル第157回 翔子先生

フランス・ルルド 奇跡の泉

新たに世界の奇跡や神秘をご紹介するコラムを掲載することになりました。題して『世界の神秘と奇跡ファイル』。世界各地の神秘的現象や、奇跡に触れることのできるコラム企画です。読んでいただければ、不思議なお話を通して、異国に思いを馳せるすてきな時間が実現することでしょう。日々の生活の中に活かせる霊的なヒントも記載。あたたも「心の世界旅行」を楽しんでみませんか?

ローマカトリック教会最大の巡礼地として、世界的に有名なマッサビエル洞窟の泉。スペインの国境に近いフランス南西部、ピレネー山脈のふもとの町・ルルドにあるこの泉の水は「ルルドの聖水」として多くの奇跡を起こしています。聖水が難病を抱えた病人を快癒させるという、にわかには信じがたい奇跡。しかし、ローマカトリック教会・バチカンが公式に認定した奇跡の快癒が70例にも上るのです。公式な認定を惜しくも受けられなかったものを含むと、じつにその100倍の7,000例とも言われています。いまも世界中から、巡礼者中心に年間数百万人がこの泉を訪れているのです。

無教育な貧しい少女に聖母が顕現

1858年、日本では徳川幕府が治める江戸時代の安政年間。マッサビエル洞窟のそばで、ひとりの少女ベルナデッタ・スピルーの前に、白い衣・青い帯をまとった、まばゆいばかりの輝きを放つ、若い女性が現れました。ベルナデッタはこの時点ではこの女性が何者であるかを知りませんでした。しかし、誰にも言わないようにと、こっそり話した同行の少女ふたりが約束を違えたことによって、うわさが町中に知られることになります。最初は亡くなった信仰深いある女性の霊ではないかと推察されましたが、姿かたちの特徴から次第に「聖母マリアさまではないか」と囁かれるようになっていったのです。ひとびとは次第にこの洞窟に集うようになりました。

ルルドの警察はこれを問題視し、ベルナデッタを署へ連行。詰問で脅かすことで「思春期の少女特有の妄想」として片付けようとします。しかし、多くの聖職者はベルナデッタが決して嘘や妄言を語る少女ではないことを知っていました。貧しくも信仰篤く、高貴な精神を持っていたからです。虚言ではないことが決定的になったのは、ベルナデッタのつぎの証言。「この若い女性は、わたしは無原罪の御宿り(おんやどり)であると名乗られました」。無原罪の御宿りとは、「原罪無くしてイエスさまを宿したもの」という意味を持ちます。この教義をローマカトリック教会が公認したのは僅か4年前、しかもベルナデッタは公教要理(カトリックの教義体系)を学べないほど無教育で貧しいことが明らかだったため、マリアさまのご顕現が事実であると証明されたのです。

ベルナデッタは導かれるようにマッサビエルの洞窟に向かい、じつに18回もマリアさまにお会いしました。無原罪の御宿りを名乗られたのは16回目のとき。そしてそれより前の9回目のときに、マリアさまのお告げによって、自らの手で泉を掘り当てました。その頃すでにその町のひとびとがベルナデッタに同行するようになっていたため、これは複数人に目撃されています。最初は泥水が湧き出し、立ち会った女性のひとりが湧き出し口に棒を差し込むと、次第に清浄な水が豊富に湧き出すようになりました。湧水は汲めども尽きぬ泉となったのです。

最初の奇跡はその3日後に起こります。洞窟から数キロ離れた村に住む女性がこのことを聴き付け、ケガが原因で動かず、曲がったまま無感覚になった指を泉に浸すと、指の感覚が戻り、自由に動き出したのです。その翌日には骨軟化症でお座りできなかった赤ちゃんが泉に浸された翌日から元気に歩き回るようになり、さらにその翌日には右目を失明した石工が、泉で目を洗った途端、視力が回復し、見えるようになりました。
以上がルルドの聖水が起こす奇跡の、はじまりのエピソードです。以来、多くの難病が泉の聖水での沐浴などによって快癒し、いまも巡礼者が後を断ちません。

奇跡認定は極めて厳格に行われている

上記以外の治癒例には、ルルドの泉の水を飲んだことによる例も報告されています。泉の水に体を浸す、患部や傷口を洗う、飲むことで起こる数々の奇跡。このような事実は現代に生きるわたしたちには俄かには信じがたいことです。しかし、バチカンによる奇跡認定は驚くほど厳格な審査を経て行われます。

奇跡から50年が経過した1908年には時のローマ法王ピオ10世が、ルルドの泉による超常的な癒しについて、教会法と綿密に照合する宗教的検証だけでなく、この上なく科学的検証をするように厳命。以来、それが厳守されているからです。最初にルルド医務局・ルルド国際医療協会による審査を受けます。フランスの錚々たる医学博士が歴代局長を務める組織です。つぎにパリ国際医学委員会による審査。じつに数十ヶ国から集められた権威ある医療の専門家から組織されている機関です。最後に吟味委員会による宗教的審査。治癒された方が所属するカトリック教区の司教が組織します。審査期間は最低4年から。10年を超えることもめずらしくはありません。審査基準としては以下のようなものになります。

難病を患っていたのが真実であったこと。危篤・もしくは全快が絶望的な、命に関わる難病であったこと。以前に受けていた治療に効果がまったく望めなかったこと。治癒が突発的で瞬時にもたらされたこと。治癒が完璧な全快状態であったこと。一時的な回復でなかったこと。全快が病者本人と他者による宗教行為によって直接的にもたらされたこと、など。これらを実証するレントゲン画像や、生体組織検査結果などの医学的証拠も必要となります。ここまで審査して、はじめてルルドの奇跡は認定されるのです。

奇跡の裏付けとしてご紹介したいことがもうひとつあります。それはノーベル賞受賞学者である外科医アレクシス・カレルの存在です。アレクシス・カレルは19世紀後期から20世紀中期にかけて存命した人物ですが、1902年に巡礼患者の付き添いとしてルルドの泉を訪れています。その際、たしかに危篤状態にあった少女が泉の水によって即日全快するさまを目撃しました。数冊の著書にルルドの奇跡を記しており、奇跡目撃後は熱心なカトリック教徒になったそうです。偉大な学者・外科医も認める奇跡。それがルルドの泉の奇跡なのです。

水のパワーが示すもの

日本では古来、穢れを水によって浄める思想・信仰が存在します。お寺や神社の手水などはそのわかりやすい例です。仏教における滝行や、修験道における水垢離(みずごり)なども典型的な例と言えます。そしてイエスさまも洗礼者ヨハネから水による洗礼を受けているのです。また、良質な水を2~3リットル飲むことで血流がスムーズになり、便通が改善され、さまざまな健康効果や美容効果が期待できることがわかっています。近年では痴呆の原因として水分不足が指摘されており、痴呆の症状の出ている高齢者に水分を適宜摂取させることで、症状が好転した実例まで報告されているのです。

ルルドの泉の水は美しく壮大なピレネー山脈の生み出した天然水であり、豊富なミネラルや活性水素を含む良質な水。飲むことで体によい変化が現れたことも病気の快癒の一因かもしれません。宗教的な浄化の意味するもの。科学的な研究によって効果が立証されるもの、されつつあるもの。総合的に考えたときに、水の持つパワーを改めて感じずにはいられません。わたしたちは霊的な意味でも、健康の観点からも天然水に敬意を持ち、水源を汚すことのない生活・自然の保護を念頭におくべきでしょう。

ルルドの泉は日本にもある!?

ところで、世界各地のカトリック教会にルルドの洞窟のレプリカが存在していることをご存知でしょうか? 実はバチカンにもつくられています。それどころか、日本にもルルドを模した祈りの場が複数設けられているのです。日本最古のルルド模型は長崎の五島列島・福江島のカトリック井持浦教会のもの。東京でも、カトリック東京教区の中心的教会・東京カテドラルにあります。ルルドの現地のように洞窟とマリアさまの全身像などを再現。中には湧水する場所につくられたものも存在します。

そしてルルドの聖水は日本でも購入することができます。カトリック教会内部、もしくは周辺にある聖品販売所・修道会運営のショップなどで売られており、ネット通販でも購入可能です。プラスチック容器に封入されているものだけでなく、容器がマリア像の形になっているもの、香水瓶のような美しいガラス容器に封入されているものなどもあり、装飾品としても適しています。わたしはクリスマスの小さなプレゼントに活用しますが、みなさん「かわいい、綺麗」と喜んでくださいます。ただし、完全に密閉されていないため、飲水することはおすすめしません。天然水だけに雑菌の繁殖も水道水より早いはずです。

ルルドの奇跡について瞑想する効果

ルルド模型に赴いた際、また聖水を手に入れたとき、あるいはルルドに思いを馳せるとき、ルルドの奇跡について瞑想してみることをおすすめします。そこには霊的に深い意義があるからです。ベルナデッタとその家族は現代の日本では考えられないレベルの貧困状態にありました。教育がない故に騙され、家・財産も失った一家は、囚人の牢獄跡を住まいとして生活。「ひとの住むところではない」と形容されるほどひどい場所でした。しかし、一家は祈りや信仰を欠かさず、おどろくべきことに、自分たちよりもさらに貧しい家無きひとびとに施しをまでしていたのです。

おそらくは自分たちが食べるわずかな食事をさらに削って、施していたのでしょう。ベルナデッタはいまで言う児童労働をしていました。ある裕福な家で働くことで、公教要理を学ばせてもらえる約束でしたが、果たされなかったようです。読み書きもできず、マリアさまと出会った14歳のときにまだ聖体拝領が許されていませんでした。ご聖体=小さな薄い、小麦粉でできたパンはイエスさまの御体としてミサのときにいただきますが、要理を学ばないとそれが許されないからです。しかし、マリアさまはそのようなベルナデッタをお選びになって自らのお姿を現しました。これが何を意味するでしょうか?

大いなる存在・宇宙の法則は知識や富・栄誉でなく、謙虚で善なるものに共鳴するということ。幸せな生活を送るためには現実にはお金は必要です。知識があるほうが、人生を有利に生きられることも否定できません。しかし、もっとも大切なことは心の富です。ベルナデッタの清貧・ルルドの聖水の奇跡について瞑想することで、わたしたちはもっとも大切なことに気付くことができるでしょう。そしてそれは、大いなる存在・宇宙の法則と響き合って生きることをサポートしてくれるはずです。

奇跡を求めて泉を訪れたひと、すべての病気やケガが快癒するわけではありません。しかし、ルルドの古き良き街並み、ピレネー山脈の美しく壮大な景観、清浄な聖水に触れて、大きな心のやすらぎを得ることができるでしょう。世界中から集う巡礼者はろうそくを手に、夕刻から夜間にかけて洞窟に向かって行列をします。その際『あめのきさき』という典礼聖歌をみんなで斉唱するのですが、各国語で歌うため、前半は異なる歌詞が混じり合うのです。

しかし、サビの部分では「アヴェ・アヴェ・アヴェマリア」という同じ歌詞で唱和。異なる言語が混じり合い、ノイジーな状態から、同じ響きに溶け合う状態へと変わります。歌声は、病やケガに苦しむひとびとの心を癒し、参加するさまざまなひとびとの心をひとつにするのです。こうした美しい光景はいまもルルドに夜ごと出現します。健康への感謝、心の富について。ときには夜に照明を消して、ろうそくの明かりのもと、考えてみるのもいいかもしれません。